法定相続分による相続登記の落とし穴?登記識別情報が通知されないことも💦
今日は相続登記の中の「法定相続分」による登記に関してお話しようと思います。
まず初めに、
お亡くなりになった方の名義を変更するのが相続登記ですが、大きく分けるとだいたい以下の3つのパターンに分けることができます。
①遺産分割協議による相続登記
②遺言書による相続登記
③法定相続分による相続登記
今回は③の法定相続分による相続登記のお話なので①と②に関しての説明は簡単にさせていただきます。
①遺産分割協議による相続登記
これは相続人全員で遺産分割協議をして法定相続分とは異なった割合で分配することが可能で、財産承継を柔軟に行えるのが特徴です。
おそらく現在の相続登記ではこの方式が一番多いと感じます。
デメリットについて言えば、相続人が大人数になると意見がまとまらなかったり、話し合いの結果を書面化した「遺産分割協議書」への署名捺印が大変だったりする点かと思います。
②遺言書による相続登記
遺言書には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の2つがあり、その遺言書を使用して相続登記を行うものです。
生前に遺言者が財産の承継先や分配方法を指定できるので、①のような協議は不要となり、ダイレクトに相続不動産を相続人や受遺者(相続人ではないが遺言内で財産承継の指定を受けた人)の名義にすることができます。
デメリットは自筆証書遺言において方式を具備しなかったために遺言そのものが無効になったり、不動産の記載ミスがあり登記に使用できなかったりするケースがあります。
遺言に関する詳しい説明はこちら
「やはり遺言書は作るべき?遺言書は本当に相続の対策になるのか?」
「自筆証書遺言の落とし穴?よくある不備をまとめてみました。」
③法定相続分による相続登記
こちらは上記①や②と異なり、法律で定められた相続分をそのまま持分として登記する方法です。
※配偶者は常に相続人となる
相続人が配偶者と子の場合 配偶者1/2・子供1/2 (子が複数の場合は1/2を子供の数でさらに分配)
相続人が配偶者と尊属(父・母)の場合 配偶者2/3・尊属1/3 (尊属が複数の場合は1/3を尊属の数でさらに分配)
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者3/4・兄弟姉妹1/4(兄弟姉妹が複数の場合は1/4を兄弟姉妹の数でさらに分配)
この法定相続分による相続登記に関しては、メリットとデメリットをしっかり分けてお話したいと思います。
メリット(利点はあるが注意が必要)
・戸籍や住民票を集めるだけで登記できる
協議書や遺言を使用した登記ではないので一番簡単にできる登記。相続人全員の実印もいらないし、遺言書の検認なども当然不要。
・相続人一人からの申請で全員分の登記ができる
遺産分割協議がまとまらなくても登記可能。他の相続人の関与なく申請できる。
デメリット
・相続人全員が必ず登記されるので柔軟な分配ができない
これは法定相続人全員がその持分に応じて登記される(共有状態となる)ので、いきなり誰かの単独所有に登記することはできません。
※のちに遺産分割協議をして誰かの単独所有にすることは可能。ですが、遺産分割協議ができるならわざわざ法定相続分による登記をする必要はないと考えます。
注意度★☆☆
・気が付いたらとんでもない数の相続人が共有状態となっていることも(特に兄弟姉妹が相続人となっている時)
最初は数名の共有状態だったかもしれませんが、しばらく何もせず放置したために次の相続が発生し、最終的に数十名の共有状態になってしまったなんて話もよく聞きます。
ただし、すぐに何かの処分をすることが決まっているのなら法定相続割合での登記をすることもあるそうです。
注意度★★★
・登記識別情報(昔でいう権利証)が通知されないケースも
この法定相続割合による登記は保存行為として相続人の1人から申請することができます。
ですが、登記識別情報は申請人となった相続人にしか通知されないので、今回申請した相続人以外の相続人は登記識別情報がないという状態になってしまいます。
こうなると、次に何かの処分をしようとしたり、後に遺産分割協議によって誰かの単独所有にする時に非常に手続きが多くなり費用もかさむことになることが予想されます。
注意度★★★
以上が、法定相続割合による登記のお話となります。
正直言うと、安易に法定相続割合による登記をするのではなく、まず遺言書や遺産分割協議による登記を検討し、本当に必要がある場合にのみ行うのがよいと思います。
また、令和6年4月1日施行された相続登記の義務化による過料を心配するのであれば、「相続人申告登記」という対処法もあるので、専門家に相談などして法定相続割合による登記をするのが最善かどうか判断されることをオススメいたします。
相続人申告登記に関してはこちら 「R6 4/1施行の相続人申告登記って何ですか?相続登記との違いは?」
今日はこんなところで。